この二つの都会は恐らくこのような所は世界中何処を探しても無いだろうという観点からすると、最もアメリカ的な都市といっても過言ではない。両都市に関しては今までも豊富に紹介されてきたし、多くの方々が一度は訪れたことがあるだろうから、事細かな説明をするつもりはない。あくまで私なりの体験を語ることにより、チョッと違った角度からこれらの街を見てみたい。
ニューヨーク近辺には仕事の関係で四半世紀近く住んだから、もう大体の所は眼を瞑っていけるし、マンハッタン島には数え切れないほど足を運んだ。多くの人がここを世界で最もエキサイティングな街と言う。得も言われぬ刺激があり、何時も何かが起こりそうな予感がする。私もハドソン河やイーストリバーを渡ってマンハッタンに入る度に、ルンルン気分になったのはどうしてなのだろうか?
この小さな島には世界の全てが凝縮されている。あらゆる人種、文化、言語、食べ物、芸術、音楽、習慣。。。。。およそ考えられるものは全部ある。各々の民族が夫々のアイデンタティ持ち寄って来ているからである。国際連合のビルはまさにその象徴えあろう。だからそれらが入り混じって一種独特の街の雰囲気を醸し出す。
そして富と貧困、美しさと醜さ、安全と危険、公平と不公平、表社会と裏社会。。。。それらが背中合わせに存在しあるいは共存しているのがマンハッタンである。また、何時の時代もこの街にはエネルギーが満ち溢れている。それはスクラップアンドビルドが絶え間なく行われているのであって、暫く訪ねないとその間に街の様相が変わってしまう。昔あったビルがいつの間にか取り壊され、新しいビルの建設が始まっているという具合である。
いわゆるニューヨーカーと呼ばれる人達は、私達一般の人間とはどこか違う感じがしてならない。世界の金融経済の発信基地で片時も眼が放せない街、生き馬の眼をも抜くと言われる程厳しい競争の街、能力や努力次第で今尚夢が実現出来る街、今でこそ大分安全にはなったがそれでも常に身の危険を感じ緊張する街、いつもホームレスが話題になる街、そしてテロリストに最も狙われる街、自由の女神に象徴されるアメリカの、世界の自由を声高に叫ぶ街。。。。挙げれば切が無い程、多くの顔を有する環境が、一見せわしなく冷たい感じのする人間集団を作り上げたのかも知れない。
いまだに私もニューヨーカーの友達がいる。彼と時々話す。金融危機の影響を聞くと、< 全く感じないね、愚痴を言っている暇があったらより良き機会を求めて自分を鍛え磨くのに余念が無いね。> ときた。タフである。でもニューヨーカーはこうでなくちゃあと思う。今まで様々な価値観を受入れて成長して来たこの街ほど多くの希望を抱いてやってくるところはないと思えるから。
私も数え切れない程の出張をしてきたが、帰って来るときには着陸態勢に入る飛行機の窓からマンハッタンを見る。空からのあの摩天楼群の眺めは圧巻である。よくぞあんな小さな島に何千となくビルを建てたものだと感心する。と同時に、ああまた自分の住みなれた戦場に戻ってきたなと感慨深かげな自分を発見するのである。
ラスベガス、無機質で人工的に作られた街としてはその歴史や規模からすると世界中で比類すべきものがない。かって何も無い砂漠のど真ん中に賭博の為に作られた町が今では100万都市となっている。そして毎年4000万人もの人が訪れると聞く。人間の欲望が作り上げた人工の街ラスベガス。そういった意味でこの街は人間そのもの。飲む打つ買うが全て合法化されていてここではあらゆる人間の欲望が満たされるようになっている。欲望という切り口で人間の夢をカタチにするとこの街になると言っても過言ではないだろう。
ラスベガスという街は、ハタから見ているとただのギャンブル場、あるいは趣味の悪い街?ところが、一度行ったら魅せられてしまう人の多い 摩訶不思議な街。また、どうにもこうにもリピートしたくなる町ナンバー1らしい。 どう見ても、張りぼてレプリカでお下劣な建造物も、ホントバカ過ぎて途方もなさ過ぎて笑うしかない。ここにはニューヨークやパリ、水の都ベニスまである。極端に言ったら ここは地球のおもちゃ箱としか言えないかも知れないが、これを笑えない人は、大人のユーモアがわからない?のだと思う。
砂漠の中に忽然と現れそしてこれでもか、の光りの洪水。砂漠の中を忘れさせるくらいのこれでもかの水の祭演。このふざけ過ぎた街へ一度は行ってみる価値はある。ラスベガスという街は日常と切り離された空間という印象があり言わば大人のディズニーランドって感じなのである。賭博額ではマカオに追い越されたと聞く。またモンテカルロの雰囲気とは違う。ラスベガスと言うのは何度行っても新しい発見がある楽しめる街なのである。
何故か私もこの街が好きでもう40回くらい訪ねている。遊びで、仕事で、家族旅行で、いやはたまた皆に大反対されたから結婚式までこの街でやってしまった。最初のうちはギャンブルにも熱中したが、からくりが解って来たので最近はのめり込まない。でも負ける。(ちなみにプロ級のギャンブラーとビギナーズラックを除いた97%がいずれ負けるという統計を何処かで読んだ。)
負けても不思議と爽やかで後味が悪くないのは何故なんだろう。それは少々の出費を差し引いても尚余りあるほど色々な娯楽を楽しめる一大エンタメシティだからなのだろう。また全米最大のコンベンションシティでもあり、常に何らかの展示会が開かれていたり、ロデオの全米大会すら催おされる。眠らない街、活気のある街、成長を続ける街なのである。
三十数年前ロスから夜間車を運転して初めてラスベガスへ行った。近くなるにつれて空の明るさが増してくる。盆地に作られているから峠を越えて入って行く。その峠の頂上に着いた時、瞬時に拡がる広大な光の海を見た時の感動は今尚忘れない。神が創った自然美には勝てないが、人間が作った人工美も捨てたものじゃないなとその時思った。