モウさんの総入れ替えと言う事で新しいグループが牧場にやってきた。(企業社会では業績の悪い所は社員を入れ替えるより、トップ経営陣を交代させた方が遥かにうまく行く例が多いが。)ブラックアンガスという種類で20頭の生後10ヶ月前後の生娘ばかりである。
新しい環境に慣らす為、一ヶ月程は自由に放っておいたが物事はタイミング、いよいよ雄牛を入れることになった。やはり動物の世界、どの種類も雄牛は猛々しくて立派である。普通に言われているのは雄牛1頭で30頭前後の雌牛を面倒見切れるとのこと、いやあ全くハーレムの世界で羨ましいやらゾッとするやらで。。。。
というのはこの雄牛の職務内容は全頭孕ますこと。何処かの国の政治家が女性は子供を生む機械、などと言ってひんしゅくをかったが、ここでは雌牛はドンドン子牛を産むのが仕事、その為に雄牛は歩く生殖器とならねばならないのである。それもこれも動物の世界だから許される。そして雄牛はどれだけ孕ませたか、雌牛はどれだけ孕んだかがカットオフラインとなる。各々の出来高のパーセントにもよるがボスの満足度が得られなければこれまたリストラ対象となるわけである。
どうも人間社会も似た様なことをやっているが敗者や弱者に優しい世界など望んでも無理なことなのだろうかと一応は悩んではみる。まあそんなことを私が思っていることなどつゆ知らず、天真爛漫なモウさん達の生態は面白い。雄牛を放った途端に何が起こったか???暫く双方見詰め合っていたが突如として20頭の生娘達が3歳になるブル(雄牛)を猛然と追いかけ始めたのである。それはまさに若い娘達があのキムタクや、かってオバサマ達がヨンサマを必死になって追いかけた様に似て誠空恐ろしい光景であった。我が牧場狭いとはいえそこら中を10分位走り廻った挙句、やっと停止して皆でブルのあちらこちらを舐め始めたのである。
これで取りあえず20対1の見合いの儀式が終わったんだ、そして願わくは各モウさん達が夫々の任務を果たしてくれてこれから4-5年はこの連中とうまく付き合っていけたらなあ、と思った次第である。
ともあれここは平和な世界である。時々コヨーテが来るので散弾銃をぶっ放すのが唯一若干のテンションが高まるくらいであとは田舎暮らしの不便さはあるが気楽この上ない。テキサスは暑い。ゆえに清々しい朝陽を拝む時、満天下の星空を楽しむ時、何時もパンツ一丁(遠くから見ると短パンのようだが実は柄物の下着)で歩き回れる爽快さは都会の生活では味わえない。そういえば半世紀も昔の幼少の頃、日本の田舎でも似た様な格好をしていたなあと未来に生きる自分としてはがらにもなく久し振りの回顧しきり。そして我が人生これでよしとニンマリしたものである。