ついでだから墓石の話を続けよう。女房を埋葬してから私は息子と共に墓石の選定にとりかかった。二人の共通の思いは、全て彼女らしいユニークなものにしよう、そしてもう一度彼女を喜ばせようと言うものだった。
*** 墓石の説明 ***
(表面)
家族の苗字が真ん中に。その下に二人の結婚した日と彼女が好んだバラの花。私の没年月日はまだ空けてあるが、彼女の傍で永久に眠れるようその場所を確保してある。こうしておくことで既に心の安らぎがある。現世でもねぐらが定まってこそ落ち着いた生活を送ることが出来るのと同じことであろう。
(裏面)
TO OUR BELOVED SUNSHINE は「最愛なる私達の太陽に捧げる言葉」と言った感じ。この言い廻しは有名な歌の「YOU ARE MY SUNSHINE」から引用している。私達3人とも気に入ってよく好んで歌った歌である。歌自体は長いもので中には別れとか寂しさと言うフレーズもあるが、普通はこの最初のフレーズをみんな好んで歌う。私達もママを讃える時はいつもそうだった。そしてきしくもこの歌はママの生地ルイジアナを舞台にして歌われたものである。
『 きみは私達の太陽だった、かけがえのない太陽だった、きみは知らないだろうな?空が曇っているときも、きみは私達を幸せにしてくれた、きみは知らないだろうな?どんなに私達がきみを好きだったかを、だから私達の太陽 行かないで !!! 』
そんな思いが込められている。
” COWBOY UP & GIT ER DONE " は彼女(勿論私も)が好んでよく使った言葉。「カウボーイのように気合いを入れていつも仕事に精をだせ !」この精神はいついつまでも生きているよ、と言うような意味である。
” GO WITH THE FLOW & MAKE THE BEST OF IT " はアメリカの我が家のモットーであるが、「流れに逆らわずいつも最善を尽くせ」と言う伝統は後世にもずっと引き継いでいって欲しいと言う願いである。
( 何故私達二人だけの墓石なのか?)
息子が私に訪ねた。何故僕も将来一緒にここで眠れないんだ?と。確かに家族によっては皆寄り添って永眠するケースもある。しかし私達は一人息子に「自由」と言う最高の贈り物をしようと話し合っていた。子は成長したら親から巣立っていくもの、何時までも「家」の概念で束縛するつもりは毛頭ない。だからこの地でともに眠る必要もないし、それは私の死後の彼の選択である。ただその身は何処にあろうとも私達の思いを伝統として引き継いで行って欲しい、と共に彼が家庭を持ったらその連れ合いと未来永劫一緒に歩んでいって欲しい、そんな願いから敢えて彼の侵入?を拒むのである。夫婦とは親子とはそう言ったものだと思う。