私はいわゆる月一ゴルファーで、下手でもなければかと言って上手くもない。でもあの緑の絨毯の上で、飛んでいく方向性はままならぬものがあるとは言え思いっきりボールをぶっ叩く醍醐味は、何時味わってもいいものである。ゴルフは好きではあるがスコアをよくする為に練習場に通うまでの熱意はない。それは、人生にはパーを切るよりももっと大切なことがあると思っているからである。だからゴルフに熱心な人からは叱られるかも知れないが構わない。逆に二言目にはゴルフや仕事の話しかしない、出来ない人を気の毒に思う。
日本でゴルフを始めた人はアメリカで始めた人より一般的に上達するという。何故なら、同じ日本人でも日本のゴルフは真面目だし大枚はたいて行かねばならないから、いい加減な気持ちにはなれない。だからみんな真剣になり、また練習してより上手くなろうとする。バブルがはじけ今でこそゴルフはお気軽スポーツになったとは言え、日本ではいまだに真面目さが要求されるスポーツのようである。ルールや服装はもとよりキャディまでことのほか五月蝿いのは今も同じであろうか?!紳士のスポーツと力んでいるから色々五月蝿いのは解るとしても一方では賭けゴルフは当然のこと、ニギリだとかオリンピックだとかナッソーだとか私にはチンプンカンプン。この辺りの落差はどうしたら理解できるのだろうか?!かって日本へ出張した折にちょくちょくゴルフに連れて行ってもらったが、固苦るしいことこの上なく、また握っているから皆眼が血走っているし、リラックスして楽しめるスポーツには程遠かったことを覚えている。
私は100前後のスコアで廻れば良しとしているから、少々OBを打とうが50センチのパットを外そうがそんなにカッカ来ない。あまりストレスが溜まってお脳の血管でも切れたら、何をやっているのか解らないし別にそれでメシを食っている訳じゃないから気楽なゴルフが一番と思っている。好きだから回数だけはこなしているが、アメリカでジャケットを着なければならなかったゴルフ場やコンペは数える程しかなかった。夏場は短パンに決め込んでいるから、涼しくて快適でもある。プライベートのゴルフ場も嫌ほど行ったがキャディなど付いたことも付けたこともない。クラブハウスやコースのあちこちで飲ませ食わせの過剰とも思える饗応も殆ど無い。(最も日本ではこの売り上げが結構大きいと聞く。)そして簡単なシャワーがあるゴルフ場もあるが、勿論日本のような立派な風呂も無い。ただゴルフをやる為の所だから料金が安いのである。
ここテキサスの片田舎でも立派なチャンピオンシップ並みのゴルフコースがあり、家から20分くらいで便利だからということで私も引っ越してきて間もなく会員となった。セミプライベートのカントリークラブでプールもあればテニスコートもありそれでいて会員権というか入会金300ドル。後は毎月100ドルの維持費を払っていけば家族全員が終生会員である。そしてゴルフは毎回カート代10ドル払えば、18ホールのプレーが出来る。何これ?と言う程安い。
そして会員数700名前後と言っていたがそのうち頻繁にプレーするのは2割にも満たないのではないか?! 何故かと言うと予約も殆ど要らず、特に平日は何時行っても前にも後ろにもプレーヤーがいないことしばしばである。だから中には女房子供をカートに乗せてピクニック気分でプレーしている輩もある。かと言えば6人一組で廻っている連中もいる。それでいて他のプレーヤーの邪魔をするわけでもなく最低限のマナーはあるから、案外ゴルフは楽しむものという観点に立てばそんな感じでいいのかも知れない。数え切れない程のアメリカ人達とゴルフをしてきたがあれこれ五月蝿いプレーヤーに会った事は一度もない。如何にもカジュアルが好きな国民性が現れていると思う。まさにジーパンカントリーである。そしてゴルフも何時でも好きな時に好きなだけ出来るということになると、あまりやりたいとも思わなくなるから不思議である。
で、こんな調子で経営していて採算は合うのかなあ、と人事ながら気になる。オーナーは昔の全米プロ、70歳半ば、奥さんもその辺りの年齢であるが、この二人は働き者でアイデアが凄い。ゴルフは二の次で立派なクラブハウスをコミュニティの社交場にしてしまったのである。片田舎ゆえに多くの人が集まる社交場は教会くらい、だから彼らは毎週木曜日の夜はディナー、日曜日の昼はランチのブッフェで会員及びその友達家族を集める。その間に結婚式のリセプションや会社のパーティにも場所や食事を提供ししっかり金儲けをする。これで700名の会員のうち、ゴルフをしない連中が8割もいる理由がお解かりいただけたであろう。奥さん自らが腕を振るった料理はとても美味しいから私達もよくブッフェを食べに行く。感謝祭やクリスマス辺りは500人くらいのゲストが食事に来るから3回にわけて食事やら飲み物を提供するのである。
忙しい時は4時間チョッとで500人のゲストの食事の世話をする訳だから余程うまく計画、管理しなければまず滅茶苦茶となること請け合いである。その上二人はゲストが食事中あちらこちらのテーブルを廻り愛嬌を振りまいている。私はこの辺りに二人のクラブ経営成功の秘訣があるような気がした。それは食事に関してはきめ細かなパーソナルタッチ、ゴルフに関してはプレーヤーが楽しむゴルフをする為には少々のことは眼を瞑る寛容さ、これだと思った。
日本から友達が来ると必ずここへ連れて行って食事やゴルフを楽しむ。結構距離や起伏もあり難しいコースだからスコアメイクに苦労するが、でも全員が大満足で帰っていく。私の隠れた迎賓館である。