ラウンドアップ
今年の冬は散々な目にあった。殆どが天候に関することなのだが、自然を相手にしていると大なり小なり災害はつきものである。テキサスのこの地域では旱魃やら竜巻やらの被害には慣れっこになっているが、今年の冬は違った。大寒波に襲われ我が牧場も多大な被害を被ったのである、それもひと冬で3度(1回は零下15度、他の二回は零下10度)。こんなことは30年振りとからしい。でも自然を相手と思うから闘いたくなるのであって、自然と共生しようと思えば、あるがままを受け入れていくということになり気持ちも不思議と落ち着ついてくる。
冬の終わりにもう一つ気が進まないけれどやらねばならない事があった。毎年1月に牛を駆り集め(ラウンドアップ)前年に生まれた子牛達を市場に売りに行く。母と子の別れのシーンであるが、残酷と言えば残酷、経済動物とわりきれば淡々とその作業を済ませることが出来る。ラウンドアップは一人では難しいので私は近隣に住む数人のカウボーイの友達にヘルプしてもらうことにしている。趣味の牧場とは言え、子牛が大きくなると近親相姦が始まるので、親子を引き離すのは致し方ないこと、この辺りがやはり人間の世界との違いでもあろう。
おりしも、日本ではキャロラインケネディ大使の太地町のイルカ追い込み漁批判声明がホットな話題になっている。非人道的であるという論法だが、どうも普遍的な理由には程遠い。アメリカではクジラやイルカは犬や猫に類するペット的な考えからなのだろう。「じゃあ、牛や豚や鶏はペットとか思わないから食用として殺してもいいのか?」ということになり整合性はない。ただ一つ言えることは、例えば牛にも絶対に感情があるということえある。でなければ、ラウンドアップで子牛と強制的に別れさせられた母牛達が、その場所を離れず三日三晩も鳴き続ける訳がない。
毎年この時期になると複雑な気持ちになる。でも人道主義平和主義は大事だけれどこの俗せ界、それだけでは生きられないことも確かである。