私の知る限り、牛の放牧の世界は「ハーレム」か「江戸時代の大奥」そのものである。日本での牛の交配は厩舎で行われるのが普通であるが、全て人間さんが取り仕切る。ところがアメリカに多く見られる放牧においては自然界の摂理というか法則に則って行われる。基本的には雄牛一頭が雌牛30から35頭の面倒をみるのである。まさにハーレムの貴公子か徳川将軍、見るからに威風堂々としていてとても立派である。
我が牧場、今の所20頭の雌牛しかいないので写真の雄牛一頭で十分である。もちろん全てが自然の営みとして牛まかせ。
父牛が群れの中で自然交配を行い、自然分娩・出産は母牛の自力作業である。生まれてきた子牛への自然哺乳も母牛が行うので、子牛は成長に必要な成分を豊富に含んだ母乳を飲み、母牛の愛情をたっぷりと注がれながら成長する。人間の子どもと同様、成長するに従って集団のルールや自然の生き方を学んでいくのである。自然界は嫉妬や複雑な男女関係とは全く無縁の世界のようである。我が牧場の貴公子、昨年の妊娠的中率100%、素直に脱帽するとともに「おつかれさん」とねぎってやりたい。